結婚生活が破綻して離婚するとき、最大の問題は「誰が子どもを引き取るか?」ということかもしれません。

日本はG20において、離婚した父母の共同親権が認められていない数少ない国の1つですが、5月17日、現行法を改正するための法案が国会で成立したことで、この状況は変わろうとしています。

新しい法律の下では、父母は離婚後に共同親権か単独親権かを協議して決め、合意できないときは家庭裁判所が判断します。

裁判所がDV=ドメスティック・バイオレンスや子どもへの虐待があると認めた場合は、父母のどちらかに(単独)親権が与えられます。

共同親権の導入をめぐっては、メリットとして離婚後も両親が子どもに影響する決定について協力するようになるという意見もあるようですが、離婚した人たちの間では賛否が分かれています。

国は、改正法が施行される2026年までに、新しい制度の詳細を検討するとしています。

 

「離婚後も両親が子どもに影響する決定について協力する」

果たして本当にそうか? 協力できなくなったから離婚するのではないでしょうか。

少なくとも弁護士のところに相談、依頼する夫婦に関して言えば、離婚後も協力関係を期待できるのはごくごく一部に限られるという印象です。

 

離婚後に父母に共同親権が認められる場合、元夫婦が育児を分担することになるでしょうが、夫婦の取り決めにもよりますが、海外の事例を見ていると子どもがお互いの家を行き来する、あるいは両親それぞれが子どもの住む家を行き来することになるでしょうか。育児を平等に分担しやすくなるかもしれません。

実際に過去に似たようなケースはありました。

妻が裁判官に「離婚後、自分も夫の近くに住んで育児を分担するから、夫(父)を親権者にして離婚後も夫にも育児を分担させてほしい」と訴えていたケース、

離婚前の別居期間中ですが、夫が子どもと同居し基本的には夫が育児をしながらも、
別居中の妻も夕方など夫が仕事で家にいない時に家に行き子ども(当時、小中学生でした)の夕食を作るなど育児をしていたケース、

面会交流調停において、夫(父親)が毎週土曜日ないし日曜日の面会交流(そのうち月2回は土曜日から日曜日にかけての泊まり)を獲得したケース(土日に関して言えば育児を半分ずつ分担と言えるでしょう)

などです。

ここで気になるのは、このように双方が育児のかなりの部分を分担しあう場合、「養育費はどうなるのか」ということです。少なくとも今までの算定表は使えません。

一方で、元夫婦の片方が遠方に転居した場合、仮に共同親権に決まっても、実質的には育児にはほとんど関われないだろうと思います。この場合は、共同親権の意味は、重要な契約ごとは元夫婦の連名でなければ契約できないという点でしょう。

 

親権争いはどうなるか?

これまでは、親権については、特に子が幼少であったり女子であったりする場合は、妻(母親)が圧倒的に有利でした。夫は同じ土俵にすら上がれていない、はなから勝負にならない、親権を主張することすら初めから諦めてしまう、こういうケースがほとんどでした。

共同親権導入後は、今まで勝ち目がないと諦めていた父親が共同親権なら見込みがあると積極的に争うケースが増えてくると思います。

 

今後、法令がどこまで具体的に規定していくのか、裁判所は養育費の問題を含めどこまで具体的なルール作りをしていくのか、注視していく必要があります。