初期の診断書、画像を十分に残しておくことです。
後遺障害は、通常、事故受傷から6カ月を経過した後に症状固定と診断された時点で申請します。
後遺障害等級は、自賠責保険会社を窓口にして、損害保険料率算出機構に属する自賠責損害調査センター調査事務所が認定しています。
昨今、後遺障害認定の基準は極めて厳しくなっています。
例えば、通院終了時点で、医師が後遺障害診断書を作成する際、後遺障害が残っていることについて詳細に書いてくれているのに、「事故直後の診断書では単なる打撲という診断になっているから、事故とは因果関係が認められない」として後遺障害等級が認められない場合があります。
因果関係がないというのは、「通院終了時に医師が書いた所見は、事故後に、事故とは全く関係なく怪我をしたのであろうから、事故による後遺症とは認められない」という判断です。
また、例えば、通院終了後も股関節に障害が残り、通院終了直前に撮影したMRI画像もあるが、後遺障害等級が認められないという例もあります。
「MRI画像を撮ったのが、事故から何か月も経った後だから、事故との因果関係が認められない」というのがその理由です。
このような問題も、事故後すぐに弁護士に相談していれば、X線画像だけでは不十分なので、できるだけ早い時期にMRI画像を撮るよう指示を受けることができますから、撮影時期が遅すぎるから後遺障害等級が認定されないという事態を回避することができたはずです。
このように、通院を終了して後遺障害等級認定の手続きが終わってしまってから、示談交渉だけを弁護士に頼むのでは遅すぎることもあります。
それでは、被害者の方に本当に生じた損害が賠償金額として評価されることはなくなってしまうのです。
事故に遭われたら、すぐに弁護士に相談されることをお勧めします。
もっとも、上記のように判断されてしまった場合でも、カルテの精査や、後遺障害(等級認定)に精通した医師の意見書などにより、適正な後遺障害等級認定を受けることができる場合もあります。
当事務所弁護士は、東京にて3年半、損害保険会社の顧問弁護士事務所にて勤務、
独立後も12年間一貫して交通事故事件を扱っており、事案ごとのポイントは把握しております。
医療訴訟の経験もあり、高次脳機能障害の事案など特殊な案件も対応できます。
また、後遺障害等級認定にあたっては、損害保険料算出機構顧問医(整形外科医)と協力関係にあり、被害者が適正な後遺障害等級の認定を受けられるよう、被害に見合った適正な賠償金を獲得できるようサポートします。
むち打ちで後遺障害14級が認定されるケースは、少なからずあります。
交通事故による後遺障害のうち、最も多いのは、頚椎捻挫後の頚部痛・手のしびれ、腰椎捻挫後の腰痛・足のしびれ等の症状が残存してしまうという障害です。
同じ「頸椎捻挫」、「腰椎捻挫」という傷病名でも、実際に後遺障害等級認定の申請をしてみると、「非該当」、「14級9号」、「12級13号」と結論が分かれてしまうことはよくあります。
「非該当」であれば保険会社が提示する示談金額は100万円以下のことが多いですが、
「14級9号」が認定されれば裁判所・弁護士基準で300~400万円程度の金額になることも多く、
「12級13号」が認定されれば800~2000万円程度の金額になることもあります。
このように、同じ頚椎捻挫・腰椎捻挫と診断され、症状が残ってしまった場合でもどう認定されるかによって、損害賠償の金額に随分と大きな違いが生じてしまいます。
事故による神経系統の障害について、医学的証明はなされていないが、説明はつく場合です。
むち打ちについて、14級に該当という方もいれば、非該当という方もいます。
非該当の理由としては、
(1)「画像上、異常所見は認め難い」、
(2)「神経学的所見は認められない」、
(3)「症状経過、治療状況等も勘案した結果、将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉え難い」と記載されていることが多いです。
(1)「画像上、異常所見は認めがたい」
これについては、頸椎の全体に、年齢変性所見が乏しく、経過のMRIで、C4/5,C5/6,C6/7のいずれかにヘルニア所見=椎間板突出が認められているかなどが判断材料とされています。
(2)「神経学的所見は認められない」
これについては、「事故直後から、左右いずれかの上肢、肩から手指にかけて、だるさ感、重さ感、痺れなどの症状が認められたか」、「それが今も継続しているか」、「自覚症状に一致して、スパーリング、ジャクソン、神経根誘発テスト等で陽性反応を示しているか」などが判断材料とされています。
(3)「症状経過、治療状況等も勘案した結果、将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉え難い」
これについては、通院日数・期間、治療内容、処方薬などが考慮されます。
画像上異常所見がなく、神経学的所見が認められない被害者でも14級が認定される方もいますが、通院日数・期間、治療内容、処方薬、既往症の有無などによりケースバイケースです。
後遺障害の認定に納得がいかない場合、異議申し立てをしたらいいか、迷う方も多いと思います。
諦めたら、そこで結果は確定します。
異議申立をして認定が覆る見込みがあるかどうか、まずは弁護士にご相談ください。
異議申立をする場合、医師に新しく後遺障害診断書を書いてもらう必要がありますが、
医師に対して単に「異議申し立てをしたいので診断書を書いてください」と頼むのは、お勧めできる方法ではありません。
この言い方では、ほとんどの場合 「後遺障害診断書と違うことは書けない」、「同じことを少し強調して書くくらいしかできない」、「あなた(被害者)の言っている自覚症状を書き足すくらいしかできない」という返事をされるか、同じ内容の診断書を発行されるだけだからです。
医師に追加で診断書をお願いするときは、 どのような医学的事項について記載をお願いしたいのか、具体的に示すことが大切です。当事務所では、この部分もしっかりとサポートしていきます。
異議申立後の認定結果に納得がいかない場合は、後遺障害の等級認定を求め、紛争処理機構に申請をするか、裁判所に訴えを提起することになります。
どちらがよいかは、ケースバイケースではありますが、当事務所では裁判所に訴えを提起することの方が多いです。
紛争処理機構
自賠責保険の認定例(異議申立、紛争処理機構)を見ますと、特に14級と12級の違いについて、他覚的所見があるかを厳密に見ているように思われます。
自賠責保険においては、画像所見で外傷性の所見が認められれば問題なく12級以上に認定されますが、事故前からの変性所見が存在しても、多少の神経学的所見がある程度では、容易に12級は認めないように思われます。
裁判所
これに対して、裁判例では、画像所見に加えてある程度の神経学的所見がある場合に、12級まで認めている事例もあります。
裁判例では、画像所見に偏重せず、事故状況、受傷態様、治療経過、症状固定後に残存する障害の内容等も含めて、総合的に判断した上で、後遺障害の程度・等級を判断していると思われます。
また、裁判では、裁判所及び当事者が協議して和解で中間的な解決を図ることも期待できます。
その他、紛争処理機構に申請しても時効の中断にはならないことから、当事務所では裁判所に訴えを提起することの方が多いです。