「一緒に死のう。睡眠薬を飲めば楽に死ねる--。」

 

神奈川県座間市のアパートの一室で9人の遺体が見つかり、この部屋に住む白石隆浩容疑者(27)が死体遺棄容疑で逮捕された事件。

報道によると、

「白石容疑者は自殺願望の女性に心中を持ちかけていたが、「全く自殺するつもりはなかった」と供述している。

捜査関係者によると、白石容疑者はツイッターで自殺願望があるかのように装って女性に接近。「一緒に死のう」などと若い女性を誘い出しては、自宅に招き入れていた。

当初は調べに対し「部屋に入って、いきなり襲った」と説明していたが、その後に「被害者をリラックスさせるため、酒や睡眠薬、精神安定剤を飲ませた」などと供述を変えた。それを裏付けるように部屋から睡眠薬が見つかったという。

白石容疑者は「自分もツイッターに自殺願望の投稿をしていたが、その気はなかった。全部うそです」とも供述。動機については「金銭や乱暴目的だった」と話しているという。 」

(毎日新聞 2017.11.5)

 

自殺願望者を殺害したとなると、法的には嘱託(承諾)殺人罪の可能性も視野に入れながらの捜査にはなるでしょう。

 

刑法第202条は、「人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。」と定めており、死刑まである(通常の)殺人罪よりも刑が軽くなっています。

 

被害者の方の自殺願望がどの程度であったかなど具体的状況によって、(通常の)殺人罪か承諾殺人罪等か、どちらの可能性もありますが、

容疑者が自殺の願望はないのに「自分も自殺したいので、一緒に死のう」と装って、被害者の方を誤信させ、承諾を得て殺害したとなると、殺害についての承諾は被害者の方の真意によるものとは言えず、(通常の)殺人罪が成立する可能性が高いだろうと思います。

 

弁護士 臼井義幸