例えば夫が受け取る退職金は、退職金は賃金の後払いの性質もあるところ、妻のサポートがあったからこそ働き続けることができたと考えられることから、やはり夫婦で築いた財産として、財産分与の対象となりえます。

もっとも、既に退職金の支給を受けて夫名義の預金となっている場合は、この預金自体が、夫婦の実質的共有財産であるとみることもできます。

では、定年までにはまだ数年あり、退職金を実際に受け取るのが数年先であるような場合はどうなるのでしょうか。

このような場合、退職金は離婚の時点では現実化していない財産であるものの、将来受け取ることがほぼ確実なのであれば、財産分与の対象に含まれないとすると極めて不公平な結果となります。

従って、数年後に退職するケースでは退職金も財産分与の対象とされる例が多いです

例えば、6年後に夫が定年退職するケースで、即時に妻に財産分与として支払うことを命じたものがあります【東京地判平成11年9月3日】。
夫婦の実質的な婚姻期間に対応する分につき、6年早く受け取れる点を割り引いた金額の5割の分与を認めています。

又、8年後に定年退職するケースで、実際に退職金の支給を受けたときに支払うことを命じた事例もあります【名古屋高判平成12年12月20日】。
この事例では、現時点で自己都合で退職した場合の退職手当金額をベースとして金額が算出されています。

退職金は高額にのぼることが多いこともあり、協議や調停などで紛糾することが珍しくありません。

そのような場合は、どのような根拠で、いくら請求するか(反対の立場であれば、いくらなら支払うか)について弁護士に相談されることをおすすめします。